『道の終わり』

道は一本ではないはずだ
何度目だろう そんな強がり
この道はどこにでも繋がっているはずだ
先行きの見えない汚泥の中で そんなことだけにしがみついて

道を歩く 歌を口ずさむ
通り過ぎていく路傍の両端に懐かしい笑い声
血眼になって探し続けてきたのに
なぜだろう 今は涙も出ない

どこか 何かに落ち着こうと始めた旅路は
迷いつづけることその物が快楽に成り果てたけど

独りは楽で静かで狂気だ
こんな初夏を向かえた鮮やか過ぎる光ですらも
その景色を夢の中に溶かそうとする
そしてそんな始めから解りきっていた
あまりに陳腐な夢物語のできレースが
また一つ一つ着実に歩を進める

道の途中で出会った優しい人々は
愛と春をひさいでは欲望に串刺しにされたまま絶望的な美しさで笑う

道は音の無い草原の中に入ってきた
北からやって来た双子の風が
こちらに春の終わりを投げかけて後
気紛れにまた飛び去っていく
凪ぎ渡る蒼の海の中を進めば
光の底はみんな名も無い停留所となる
言葉を発することさえ億劫だ
黙って独り酒に酔う

誰か道を歩く者にかじりつくように
時代を超えてゆく混迷した曇天の中で
叫び散らす全ての甘言を
僕自身を上手に騙すようにそっと呑み込ませよう

道の道を道で道に
道へ道へ道へ道へ道へ
見失ったのさ 結局ね
強がりながら それで傷を増やしながら
当り散らしたことは全てただの妄想で終わった
結末の明示されるこんなふざけた吐き気を催すファンファーレと
それを後押しする天使の哄笑と
かまびすしい ああ かまびすしい
気取ったフリで欲望を満たす神の喘ぎ声
道はどこだ 道は
僕があれほど恋い焦がれた道はどこだ

荒野の中で擦れ違った人々は
かつて身を焦がして愛した君だったのか
道の無い場所へ踏み出して
道は自分が作るんだ なんて
洒落たジョークに口元を歪めていた
そんな懐かしい夢の最後の悪意か

その先の先のそこまで
僕は両腕を振り回して走るよ
汚泥の中の絶望のぐるぐるに
旅路の終わりには君の肌を散らすよ

ああそうだ 道の終わりだ終わりだ




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