『regrets』

君が初めて僕を見た時のことを覚えている
舞い散る桜が狂ったように目の前を横切っていくから
まるで何度も同じ場面を繰り返し見せられているかのような
そんな春の日のこと

君の手が初めて僕の頬に触れた日のことを覚えている
前日から降り始めた雪はやみそうも無くて
音も光も人の気配も無い午後二時の暗い教室の中
それは冬の日のこと

君の手が力なく僕の手から滑り落ちていった日のことを覚えている
ベッドの周りに集まった人達にはもう言葉も無くて
機械が拡張した無機質な生命の音と冗談みたいな白い部屋と
それはまた春の日のこと

うつむく雪景色 一面の雪景色 消えていく軌跡
ぼんやりと眩しい深雪 紫色した空の果て

あなたが亡くなったことを
それなりの顔をして誰かが語るとき
僕はあなたが本当に死んだことを認めなくてはならない

掻き消されていく雲 強い風 乱反射する光の帯
狂い咲く桜 産まれ来る緑 再生する大地

約束はみんな壊れたね

越えていく遥か夢の流れ着く場所で
僕ら笑った 僕ら生きてた
季節は巡りまた花景色に映る宵闇月
さよならと呟くことの強さを僕らはもう知ってた

君と初めてした約束のことを覚えている
そしてそれは最後の約束だ
永遠に叶えられない約束だ
裸の骨をさらす桜の下で僕らは
見上げれば遠すぎる秋の空の下で僕らは
懐かしい指きりをした

君が残した最後の言葉を覚えている
切り開かれた気管からはただ空気が漏れるだけだったけれども
確かに伝えられたその想いの清烈さを覚えている

古い写真みたいな空の色のその下の道を歩いて
あの河辺に立つ大きな桜の下で僕は
大きな声で叫ぼう 約束を叫ぼう
再会を叫ぼう




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