『Trash』

歩いては立ち止まり
振り返り
待ち
また歩き出して立ち止まる

過去が話しかけてきた
誰もその言葉を聞ける者はいなかった
過去は泣きながら僕の中に入ってきた
僕は笑うべきだったのかもしれない
でも涙を止めることはできなかった

見上げてはすぐ下を向き
頭を振り
うつむき
また忘れたふりを取り繕う
そんな多くの影達が
背中を丸めて去っていく影達が
何かと一緒に捨てて行った物を
僕もまた泣きながら拾い集めよう

夢が話しかけてきた
ボロボロなその姿から誰もが目をそむけた
夢は少しだけ微笑んで
目を真っ赤にしながら僕の肩を叩いた
少しだけ泣きながら
僕は捨て子を抱き上げた

もし全て 何もかもが
傷つく前に その痛みを忘れる前に
ほんの少しだけ この陽の当たる坂道の上に辿り着けたのなら
そして昔焦がれたこの丘の上の景色を
たった一度きりでも思い出すようなことができたのなら
その時 優しく肩を抱くことができたのなら

冬の陽射しの中で
凍りついたその光の中で
僕は立ち尽くし あたりを探し回り
最後まで消えなかった歌をそっと取り出してみる

昇り詰める事もなく
そして気付くこともなく
整然と歩までもそろえて
音もなく降りていくその後ろ姿の波へ
もしこの祈りが届いたなら
こんな風に静かな夜に逃げ出すこともなかっただろうか
濁り絵と呼ばれるようなあいまいな風景の中で
消えてしまいそうなこの声は叫び続ける

全ての感情を与えられたのに
なぜ削り捨てるように
吐き捨てるように
重ねてきた年月や
通り過ぎてきた場所を消し去るのか

いつの間にかこの場所は満ち溢れてしまった
ちっぽけな僕の中は
黒く固くされてしまった
誰も語ろうとしなかった
最早何の意味も無くなってしまった

押し潰されて行くその先に
無表情で向かおうとしているその先に
一体何を見て歩いていくんだろう

取り残された僕と 捨てられた子供達を
もう何も残っていない このかつては憧憬と呼ばれた物の中に
自覚もなしに捨て去って




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