『彼女の翼』

T

空のあの青さに 傷ついた彼女は
誰も触れ得ない 穴ぐらを探していた
僕はただここで歌う事しか出来なくて
通り過ぎる人の群れは祈りなんて忘れちまった

交差点を足早に逃げ出して
夜の中 飛べる場所を探す
その背中には翼なんてないのに
夢現 薄汚ねえ白い粉で


U

つけ慣れない香水を身にまとってみた
着慣れない服で嘘を固めた
いくら無理して飾ってみても
貧弱な自分には何もなかった

飛ぶ理由には何もかも揃っていた
振り返る道には光もなくて
涙をこらえながら空を見上げた
そこには無慈悲な完全な完全

「ねえスゴイの 話を聞いて
 あの空には何もかもあるんだよ」

だから飛ぶんだと笑った彼女は
とても幸せそうだったから


V

最後に伝えた言葉に嘘はない
君を愛した それだけが真実
放課後の帰り道 あの夕焼けの中で
僕が感じた気持ちは そう 悲しさだ
つないだ手はなぜか不安で
言葉もなく君を見つめた
空を見上げる彼女は綺麗で
まるで何もかもを諦めてしまったかのように

その背中には翼なんてなかった
白い粉はそんな彼女に優しくて
こらえきれず泣き出した交差点を
彼女は振り返らずそのまま飛んでった

「あの空の下には何があるの」

そう聞いた幼子の綺麗な問いに
僕らは何と答えるべきだろう
彼女は なぜ

あの空の果てのその下には
絶対の自由があると憧れていたけど
僕も彼女もそう信じていたけど
そんなものはまやかしだったと今は気付いてる

彼女は翼をほしがったけど
今はただ悲しいんだ
彼女を壊した 彼女を殺した
この自由な空の下で
行き先を失って僕らはどこへ行くのだろう

魂の祝福される場所が
もしあるのなら 彼女に福音を




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