秋の気配が色濃く残る11月。緩慢な成長を続ける北の地方都市の一角に息づく巨大な総合病院の片隅にある屋上。そこで二人は出会い、友人になった。世界にもし必然というものがあるとすれば、きっとそれは偶然の集大成みたいなもので、どこかの誰かが運命という言葉を発明したせいで生まれた、虚しい響きだろう。だが、彼、彼女は今日この場所で出会った。それに意味を見出そうが、無意味な擦れ違いだと吐き捨てようが、それはどうでもいいことであり、恐らく二人も気にはしないだろう。冬の初めの透明度を増した夕日が屋上を後にする二人の背中を照らしていた。それは何かの始まりを告げているかのようでもあり、また同時に終わりを告げているかのようにも見えた。だが実際そのスポットライトは、そろそろ中年に差しかかろうかというくたびれた男と、毒を含んだ刃物を世界中の喉元に突きつけるような雰囲気を持った生意気な女子中学生の二人の姿をぼんやりと映し出しているだけだった。
この物語はそんな場所から始まる。On Your Mark。位置について。ゴールなんてどこにもありはしないのだが。